安曇野だより
今日は良い天気で空が青い。山々は稜線の色を濃くしている。爽やかな朝だった。
昨日は姉が「さかたのおやき」を買ってきてくれてあった。あんこがたっぷり。薄皮でちょっと変わったおやきである。午前中で売り切れ、発送を頼むと半月待ちだそうです。
人生の迷走
先日親戚の息子が来宅した。彼は奥さん大好き。彼の妻はとても良い娘で、いつもニコニコして逆らわない。一番の幸せは良いお嫁さんを貰ったことね、と言うと、そうだと顔色も変えずに返事をする。そして、お蕎麦を打てるか?と訊いてくる。どうしたのかと思うと、お蕎麦を食べるのが、お嫁さんのマイブームだそうだ。それで、彼女のために蕎麦を打てという。
そんな話をしているうちに思い出してきた。
実家を清算して、仕事を探しているが、何しろ若くはないし、これと言った職場が見つからない。そこで、お蕎麦屋さんを始めようかと思った。何故かというと、お蕎麦が好きな人は山奥にでも探して食べに行く。多少立地が悪くても成り立つ可能性は高い。それに立ち食い蕎麦というように大きなお店を構えなくても良いような気がした。勿論、自分がお蕎麦大好きという事もある。丁度その頃、翁庵のご主人の本も読んだというタイミングもあったかもしれない。
身近に日本一だと思うお蕎麦屋さんもあった。信州そばというくらいなので、お蕎麦の名店というお店は沢山あるので、できる範囲で歩いてもみた。やはり私は少し色の濃い田舎蕎麦が美味しい。そこで良く食べに行くお蕎麦屋さんに、手伝いがてら教えてもらう事にした。そこのお蕎麦屋さんは、自家農園でも作っているが、近くの契約農家にお蕎麦を作ってもらっている、地粉100%だ。農家も兼業なので、食堂で出す野菜や山菜は庭に1歩踏み出せば調達できる。裏の山も自分の家なので、秋には天然茸が豊富に並ぶ。メニューに天ぷらと書いてあるが、注文が入り次第、裏口から出て摘んできても間に合うくらいである。地産地消1分である。美味しいものが沢山あった。春はナズナのお浸し、山菜の天ぷら、アカシアの花の天ぷら、夏野菜の天ぷら、新そば、茸のご飯・・・。どれも取れたての新鮮な料理だった。新蕎麦の粉を轢きたて、目の前で打ちたて、茹でたての甘くて、ふと香りが立つ美味しさは忘れられない。
そんな時、今の会社に勤めないかと話しがあった。やはり毎月の安定収入は魅力で就職することにした。今振り返ると一生懸命だったのだと思う。それまでの私の人生から見ると、突拍子もない思いつきだ。65歳の定年を迎え、これからもう1度という気力は湧いてこない。成功していたとも思えない。人生の迷走していた時期だった。