選挙も終わり、前安倍首相の狙撃事件からも数日経ち、それでも世界は動いている。
奈良遊説の前は長野県に来る予定だったそうだから、誠に運命の輪は、凡人には軌道が読めない。
何が有っても、庶民の毎日は、それなりに動いていく。
「その手を取りたい」を聴き終わる。
バブルは弾け、主人公は30歳を前にして東京を去る。
最後に主人公青子は、片思いを続けた寿司職人「一ノ瀬」に一つの頼みをする。
この物語の一番の魅力は、「寿司」。
それも寿司屋の寿司である。
スーパーや回転ずしのワサビが乗っていない寿司ではない。
1食5万円以上のお寿司。そこの常連になるまで通い詰めるOL。
青子が、東京での10年間に、何も築き上げられなかった。という嘆きは良くわかる。
いや、わかるなどと言ってはいけないのかもしれないが、未だに自分が何者にもなれていないことを自覚すると、青春真っ盛りの青子が10年間を嘆く気持ちがわかる気がする。
バブルの中で女性進出とか言われて、それまでは事務職でしか採用が無かった一般職への登用が始まり、結婚しても食事はつくらないという共稼ぎの女性も出てきた。
食事も作らず、浮気としての肉体関係にも後ろめたさを感じず、確かに、あの頃はバブルとい名の社会の変革点だったかもしれない。
都会で夢中で仕事をしていても、ふと我に返ると、これという世の中に通用する蓄積
がない。
今までの人生は何だったのだろう・・
という突然のきずき。
久し振りに昔を思い出す。
今だって何も無いけれど、取り敢えず今日食べるものも、明日食べるものも確保されている。
寝る所もある。
それで充分じゃないかと自分を宥めてみるが、決して充分では無いと叫んでいる私がいる。
こんなにデブじゃなくて、こんなに何も持たずに、こんなに着る物にも気を遣わず、このまま一生を終わらせる気かと問いかける。
誰の手も取らず、何も行動せず、このまま一生を終わるのか。
明日と言う日は誰にも分らないものを。
最後までお読みいただき有難うございました。