それは脈絡も無く突然訪れる。
例えば、実家で飼っていたマルチーズが、初めて子犬を産んだ時、「偉いだろう!!」と言うように、私の鼻先をペロッと舐めていった時の事。
父が「穂高神社の例大祭に連れていけ」と言った時、面倒くさくて「この次ね」と言うと、「死んでしまうわ!!」と怒ったこと。
例大祭は50年に一度だからね。その通りだと思って連れて行ったけれどもね。
母と台所で夕飯の用意をしていると、「淋しくなった・・」と父が台所の椅子に腰掛けて2人を見ていた事。
父の病床に付き添っていた時、気が付くと、父が眠っている私に毛布を一生懸命掛けてくれていた事。
今までの生活の、ほんの些細な場面を突然ふっと思い出す。
こんな事はあまり無かったのだけれどな・・
若い頃は、そう40台くらいまでは、前を向くことに夢中だった。
過去の事を思い出すより、これからどうしようと 思ってばかりいた。
最近は、残された時間の事を思う。
だって、もうすぐ70歳。
元気で動ける時間は、後何年だろうかと数える。
チビ娘に逢えるのは、後何回だろうかと思う。
全てはサラサラと指の間から流れ落ちる命の粒だ。
花の種が零れ落ちて、青い花が庭に沢山咲いている。
最後までお読みいただきありがとうございました。