1.秘話かわせみ (Audoble)
文芸春秋での記念講演である。この時84歳か?しっかりした力のある声だ。恩師長谷川伸のことに触れている。彼女は末っ子の女弟子で、長谷川はどんな時でも彼女の電話は取り次ぐようにと家人に言っていた。彼女のどんな質問にも答えてくれたという。有る時、兄弟子達が長谷川に平岩を甘やかし過ぎだとクレームをつけた。長谷川の答えは、彼女との時間はもう少ない。今、背伸びをして、誰かが指で押しただけで谷底に落ちそうな彼女をどうしたら良いか。その背伸びの下に踏み台を置いてやることしかできないのだ。もうこの話は二度としてはいけないと答えた。
彼女がこのエピソードを語る時は、ちょっと声が湿っていた。
長谷川の人を愛する力の凄さに圧倒される。こんなに誰かを支えて愛情をかけることが私にはできない。甥の小さな娘達にさえ、贈り物をすればお礼の連絡が無いと不満に思う。本人が自覚しないにもかかわらず、ひたすら踏み台を置いてあげる事のなんと難しいことか。
そして、二度とこの話はしてはいけない。と言い切れる強さが凄い。兄弟子たちの不満も不条理も承知してなお、これ以上の介入は許さないという姿勢を貫く強さ。
本人(平岩弓枝)の声で聴く事ができる贅沢さに、しばし酔う。それでもなお、文字で読みたくてオール読物のバックナンバーを注文してしまった。この部分だけ切り取り取っておこうと思う。
追記 2017.6.13
オール読物が届き、ドキドキと期待しながら開く。しかし、平岩弓枝のインタビューはほんのちょっぴり。「秘話かわせみ」とは全く別のものだった。