安曇野だより
柳が優しい緑を見せてきた。しだれ梅が走路脇に満開だ。なぜか空気も明るい気がする。
「御宿かわせみ」第1巻
「御宿かわせみ」、遂に300話と話題になっている平岩弓枝「かわせみシリーズ」の1作目です。先日41巻「青い服の女」を読み、さて、1作目はどんなだったかしらと見直しました。読み始めて思うのは、このシリーズ全体を貫いている善意のオブラートが、初刊ほど色濃いことです。主人公達も若々しい。美しく初々しい「るい」、年下でやんちゃだけれど、剣も強く優しい「東吾」、幼馴染で八丁堀同心の「畝源三郎」個性的な登場人物が、宿屋「かわせみ」を舞台にした事件をさばいていきます。懐かしい人たちに逢ったようで、あ~、皆な若かったのねえとため息がでます。登場人物が皆若々しくて活動的です。
(kindleでも読めます)
この本を読み始めたのは、文庫の出た1979年。まだまだ私は20代でした。この本を読む私の気分はもちろん「るい」。リアルな私の容姿は棚に上げています。今思うと、誠に良くできた恋愛指南書です。この本を41巻も読んだのに、なぜ私は実践が伴わなかった??。全然学習していないじゃないか。と、自分につっこんでしまいます。「るい」が焼餅を焼き、涙ぐむ肩を「馬鹿・・」と言って東吾がそっと抱く。色っぽさにも憧れるお年頃、そんな姿に夢を膨らませていました。可愛い拗ね方、好きな彼氏が訪ねてきた時の、さり気ない喜びの表し方、私もやってみたい!というオンパレードです。この本が安心して読めるのは、「るい」と「東吾」に駆け引きがないからです。捕り物帳ですから、どんでん返しも有るのですが、この二人の愛情に関しては、安心していられます。ぐっと驚く悪意の塊、暴力のシーンなどという自分の意表をつく本も時々は新鮮な感情を揺り起こしてくれますが、日常的には安心して好意や愛情を受け入れられるこのような本が精神を安定させてくれます。
友人の作り方としても、良い指南書です。友人やその家族の動向に気を使い、お祝いやお見舞いに細々と品物を用意します。相談されれば、出来る事は嫌がらずに行動します。かつての恩師にも季節の挨拶を忘れません。うん、確かにこれだけやれば良い人だわね。 友人の作り方という面でも、良くできたハウツー本だといえるかもしれない。
しかし、今更読んでどうする、恋の指南書。色恋沙汰から漸く離れ、やれやれだぜ。と思っている身には、41巻の内容が身内の子供達の様でしっくりとします。
まだ若いお嬢さん、誠実な恋人はどんな相手か、素直な愛情表現ってどうするのか、信じるとはどういう事か。疑似体験してください。そして男を見る目をしっかり養ってね。